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「ステップ3」までをクリアした、「論文報告された、ヒトでの研究」の中でも、「ステップ4」をクリアした、定評ある医学専門誌に報告された研究。
「ステップ5」をクリアした、無作為割付臨床試験や前向きコホート研究。 「ステップ6」をクリアした、複数の研究で一致して支持されている理論。
これらの情報は、信頼性や重要性が比較的高いので、それなりの注意を払うべきです。 その情報にもとづいて、自分たちの生活を見直すことも、場合によっては必要になります。
それでは例題。 じっさいの新聞記事を2つ題材にして、6段階のフローチャートを使って、どのように読み解くことができるかを試してみましょう。
例題1緑茶と胃がんに関する研究の記事最初の例は、私自身が行った「緑茶と胃がん」に関する研究を報道した新聞記事です。 東北地方の地方紙である河北新報の、平成13年3月3日付けの記事(共同配信)の全文を引用します。
フローチャートをあてはめる際に3考になる記述をゴシック体にしていますので、その部分に注意。 緑茶へ緑茶を1日に5杯以上飲む人も一杯より少ない人も、胃がんになる確率は変わらない。
緑茶のがん予防効果を否定する大規模調査結果を、T大医学部のT・Y講師(公衆衛生学)らの研究グループが、1日発行の米医学誌ニューイングランドージャーナルーオブーメディシンに発表した。 従来は動物実験の結果などから、緑茶に含まれるカテキンにがんの抑制効果があるとされてきた。
緑茶をたくさん飲めばがんを予防できるのでは、という期待もあっただけに、今回の結果は注目を集めそうだ。 研究グループは、1984年1月、宮城県内に住む40歳以上の男女計2万6300人余りを対象に、1日に何杯の緑茶を飲むかを質問。
その後、92年1月までの9年間、追跡調査した。 この間、410人が胃がんになった。
1日に飲む緑茶の量で全員を「1杯未満」「1〜2杯」「3〜4杯」「5杯以上」の4つのグループに分類。 がんの発生率を比較したが、グループ間で差はなかった。
T講師は「従来の緑茶とがんの関係に関する疫学研究に比べ、調査方法や規模の点で、今回の結果の信頼性は高いと思う。 私自身も意外な結果だった。
ただし、この研究ひとつで結論が出るわけではない」と話している。 記事のもとになった「健康情報」が、6段階のフローチャートのどのステップまでをクリアしているかを吟味した結果を、表5に示しています。
順に見ていきましょう。 「ステップ1」の「具体的な研究結果にもとづいているか」は、「大規模調査結果」とあるのでクリアしています。
「ステップ2」の「研究対象はヒトか」は、「宮城県内に住む40歳以上の男女計2万6300人余りを対象」にしたとあるので、クリアしています。 「ステップ3」の「学会発表か論文報告か」は、「米医学誌」とあるので論文報告です。
「ステップ4」の「定評ある医学専門誌に掲載された論文か」は、「ニューイングランドージャーナルーオブーメディシン」とあるのでクリアです。 「ステップ5」の、「研究デザインは無作為割付臨床試験や前向きコホート研究か」はどうでしょうか。
「1日に何杯の緑茶を飲むかを質問」してから、その後9年間の「追跡調査」を行ったとあるので、この研究は「前向きコホート研究」であることが分かります。 「無作為割付臨床試験」でも「追跡調査」を行いますが、この場合、「1日に何杯の緑茶を飲むか」というような日常的な習慣を調べるのではなく、例えば緑茶抽出物の錠剤を投与するなどの、積極的な介入を研究者が行います。
けっきょく、この研究は「前向きコホート研究」ですので、このステップもクリアです。 「ステップ6」の、「複数の研究で支持されているか」はどうでしょうか。
この研究が、「緑茶ががんの予防に効く」というこれまでの定説に異を唱える結果だったことは、記事を読めば分かります。 この定説を否定するデータが、どのくらいあるのか、記事を読んでも直接は分かりません。
ただし、「この研究ひとつで結論が出るわけではない」という研究者自身の留保的なコメントから、今回のような「緑茶にがん予防効果がない」ことを示す研究は、まだそれほど多くはないことが推測されます。 したがって、このステップはまだクリアされていないと判断しても、問題はなさそうです。
以上の吟味によって、この新聞記事のもとになっている「健康情報」は、ステップ5までをクリアしていると結論づけることができます。 つまりこの情報は、「信頼性や重要性が比較的高いので、それなりの注意を払うべき」であり、「その情報にもとづいて、自分たちの生活を見直すことも、場合によっては必要になる」質のものだということになります。
これまで緑茶をあまり飲んでいなかった人は、たとえ「胃がん予防」を望む場合でも、意図的に緑茶を多く飲む必要はなさそうだと、この記事から判断することもできるでしょう。 反対に、「がん予防」を望んでこれまでお茶を多く飲んでいた人は、その効用を考え直す必要があるかも知れません。
実際、「この論文を読んで以来、緑茶を多く飲むのを止めることにした」と、知人の研究者から言われることがあります。 例題2トムヤムクンとがんに関する研究の記事。
2番目の例は、「トムヤムクンとがん」の研究に関する、平成1年1月18日付けの、朝日新聞の記事です。 本文中のゴシック体の部分に注意しながら、まずは全文を読んでみてください。
「トムヤムクン」意外な効用・タイがん予防、ラット実験で確認! タイ伝統料理のエビ入りスープ「トムヤムクン」にがん予防効果があることが、タイのC大やK大、K大の共同研究で17日までに分かった。
共同研究グループは、タイ人のがんの罹患率が日本人や欧米人に比較して約半分であることから、タイの伝統食材に着目。 トムヤムクンなどタイ料理に使われるタイショウガやコブミカンの葉の成分が、皮膚や消化器官のがんを予防する効果があることを動物実験で突き止めた。
研究グループのD大農学部教授(食品生命科学)によると、発がん性物質を与えたラットに、タイショウガなどから抽出した化合物を長期間与えたところ、がんの抑制効果が確認された。 試験管レベルの実験では、がん予防効果があるとされるベータカロチンやビタミンCよりも高い効果があった。
さて、いかがでしょうか。 この記事のもとになった情報が、6段階のフローチャートのどのステップまでをクリアしているかを、表6に示しています。
順に見ていきましょう。 「ステップ1」の「具体的な研究結果にもとづいているか」は、「共同研究」とあるのでクリアしています。
「ステップ2」の「研究対象はヒトか」は、「動物実験」「試験管レベルの実験」とあるので否定されます。 つまり、このステップはクリアしていないことが分かります。
「ステップ3」の「学会発表か論文報告か」は、この記事を読んでも区別できません。 「ステップ4」の「定評ある医学専門誌に掲載された論文か」も、分かりません。
「ステップ5」の、「研究デザインは無作為割付臨床試験や前向きコホート研究か」は、この研究が人間集団を対象とするものではないので、当てはまりません。 「ステップ6」の、「複数の研究で支持されているか」は、この記事を読むだけでは分かりません。
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その後、92年1月までの9年間、追跡調査した。 この間、410人が胃がんになった。
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けっきょく、この研究は「前向きコホート研究」ですので、このステップもクリアです。 「ステップ6」の、「複数の研究で支持されているか」はどうでしょうか。
この研究が、「緑茶ががんの予防に効く」というこれまでの定説に異を唱える結果だったことは、記事を読めば分かります。 この定説を否定するデータが、どのくらいあるのか、記事を読んでも直接は分かりません。
ただし、「この研究ひとつで結論が出るわけではない」という研究者自身の留保的なコメントから、今回のような「緑茶にがん予防効果がない」ことを示す研究は、まだそれほど多くはないことが推測されます。 したがって、このステップはまだクリアされていないと判断しても、問題はなさそうです。
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これまで緑茶をあまり飲んでいなかった人は、たとえ「胃がん予防」を望む場合でも、意図的に緑茶を多く飲む必要はなさそうだと、この記事から判断することもできるでしょう。 反対に、「がん予防」を望んでこれまでお茶を多く飲んでいた人は、その効用を考え直す必要があるかも知れません。
実際、「この論文を読んで以来、緑茶を多く飲むのを止めることにした」と、知人の研究者から言われることがあります。 例題2トムヤムクンとがんに関する研究の記事。
2番目の例は、「トムヤムクンとがん」の研究に関する、平成1年1月18日付けの、朝日新聞の記事です。 本文中のゴシック体の部分に注意しながら、まずは全文を読んでみてください。
「トムヤムクン」意外な効用・タイがん予防、ラット実験で確認! タイ伝統料理のエビ入りスープ「トムヤムクン」にがん予防効果があることが、タイのC大やK大、K大の共同研究で17日までに分かった。
共同研究グループは、タイ人のがんの罹患率が日本人や欧米人に比較して約半分であることから、タイの伝統食材に着目。 トムヤムクンなどタイ料理に使われるタイショウガやコブミカンの葉の成分が、皮膚や消化器官のがんを予防する効果があることを動物実験で突き止めた。
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